戸田 保育園や幼稚園には必ずアンパンマンのグッズがありますし、病気で長期入院しているお子さんの病室にもぬいぐるみが置かれている。私に子どもはいませんが、子どもたちにどれだけ影響力があるのだろうと。自分で声をやらせていただきながら、アンパンマンが持つ力の大きさに圧倒されそうになったこともありました。
中園 うちの息子はばいきんまんが大好きで、保育園の頃は毎日ばいきんまんの帽子をかぶって登園し、ほかの帽子はかぶってくれませんでした。ディズニーランドに連れていったときも、ばいきんまんの帽子をかぶったままで(笑)。ある年齢の子どもたちは、アンパンマンのキャラクターと一緒に生きているようなところがあるでしょう。
戸田 同感です。先生が亡くなったとき、それまで自分を守ってくれていた大きな傘を失ったような喪失感に襲われて、『アンパンマン』のお仕事をやめようと思ったこともありました。
でも、東日本大震災以来、毎年被災地でボランティアのイベントを行っているんですけど、アンパンマンが会場に登場すると、「アンパンマーン!」って、子どもたちがいっせいに駆け寄ってくる。その光景を見たときに、「やめちゃいけない」って。
中園 やれるところまで、ぜひやってください。
戸田 正直な話、葛藤はあるんです。キャストもみんな高齢になってきましたし、初代のジャムおじさんやドキンちゃん役の方もすでに亡くなられたので、自分の目の黒いうちに誰かにバトンタッチするか、それとも死ぬまで続けるかって。(笑)
中園 いやいや、ずっと続けてくださいよ。戸田さんの声じゃなかったら、アンパンマンの魔法が消えちゃいますからね。